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 どんなときでも自分らしく
 〜「しごと」と「くらし」が重なる場所へ〜/会報aile63号(2008年9月号)

株式会社鶴田商会環境事業部エコ・ブランチ 鶴田紀子さん


鶴田紀子さん
株式会社鶴田商会環境事業部エコ・ブランチ

1950年愛知県生まれ。名古屋市立短期大学卒業後日本郵船鞄社。退社後モード学園デザイナー科へ。78年結婚。鶴田商会入社。1990年よりほ・の・ま。2000年Eco-Branch開始。


事業概要


株式会社鶴田商会環境事業部エコ・ブランチ
〒452-0823 名古屋市西区あし原町10
Tel:(052)509-1680
Fax:(052)509-1683
E-mail:webmaster@eco-branch.com
URL:http://www.eco-branch.com/
事業理念 いのちが活かされる、生きる喜びの感じられる平和で美しい社会を創る
事業内容 循環型社会へのライフスタイルの提案
松の樹液100%の自然洗剤を中心とした環境商品及び装置の販売、講演会・研修会等の企画運営

どんなときでも自分らしく
〜「しごと」と「くらし」が重なる場所へ〜

「本当にすごい反響でびっくりしました」

と話すのは、株式会社鶴田商会環境事業部エコ・ブランチの責任者・鶴田紀子さん。
5月の半ばにエコ・ブランチの扱う環境に優しい多用途洗剤「松の力」がテレビ放映されたときのことだ。洗剤や開発者の紹介、愛用者の声とあわせて、“ほんの少し”エコ・ブランチも紹介されたのだが、

「その晩からホームページへのアクセス数は急増し、問い合わせの電話もたくさんいただきました。環境にやさしく使い心地のよい商品を多くの人に使っていただきたいと2000年から「松の力」を扱ってきましたが、こういう商品を待っている方々はまだまだたくさんいらっしゃることを実感しました」。

そう語る鶴田さんの表情は、本当に嬉しそうだ。単に商品が売れたから、ということではない。
新しい出会いとつながりに心からわくわくし、そして感謝していることが全身から伝わってくる。

経済のしくみへの疑問と不安から

鶴田商会は創業60年を超える電熱線・ステンレス等を扱う商社。2代目社長の妻である鶴田さんは、仕事を手伝いながら社会の流れに目を向けたとき、疑問を感じずにはいられなかったという。

「大企業を頂点とするピラミッド構造の中で、無理な納期、無理な値引き交渉が年中行事のように続くんです。量を多く仕入れるから値引きしろ、景気が悪いから値引きしろと言われ、でも、景気がいいから高く買いましょうとは決して言われない。同時にモデルチェンジと称してまだ使えるものがどんどん捨てられていく・・・。これは一体何なんだろう、こんなことで成り立っている経済って大丈夫なんだろうかってすごく不安に思ったんです」。

どうして分かち合えないんだろう。分かち合うことができればもっとみんな自分らしく生きていくことができるのに・・・。そう漠然と感じた鶴田さんは、40歳のときに休日を使って「ほ・の・ま」という屋号で活動をはじめる。「ほ・の・ま」とは育ちゆく出会いの広場という意味が込められた言葉。“いのち”が活かされる社会をどうしたらつくることができるのかという問題意識で、様々なセミナー、講演会、イベント等を企画しながら、新しい価値観で生きていきたいと考える多くの仲間たちとのネットワークをつくってきた。

「単なる勉強ではその後日常に戻ったときにまた元の自分に戻ってしまう。だから、音楽なども含めて魂の扉に働きかけたり、感性をひらいていくようなそんな場づくりをしたかったんです」。

いつでも「自分でありたい」という願い

しかし、「ほ・の・ま」の活動が盛んになればなるほど、鶴田さんは新たな悩みを抱えることにもなった。

「だんだん仕事をしているときの自分と「ほ・の・ま」の自分を使い分けることが苦しくなってきたんです。いつも自分でありたい。仕事の中でも自分として生きていきたいと」。

そんな中で、鶴田さんはユーテックジャポンの吉田社長と出会う。
吉田社長は、子供の頃泳いだ川がヘドロの川に変わっていたショックから起業し、川をきれいにしたい一心で、世界中の自然洗剤を集めて研究。その中で、松の樹液を原料とするものが最も環境に優しいことがわかり、独自商品を開発したという。
  その志と洗剤の使い心地のよさに感動した鶴田さんは、この商品を自分も販売したいと申し出る。吉田社長も快くそれを了承し、鶴田商会環境事業部エコ・ブランチが誕生した。鶴田さんはその商品を更に改良し、現在の多用途洗剤「松の力」が生まれる。エコ・ブランチの立上げは、社長である夫も従業員も、みんなが応援してくれたという。
 が、一方、その立上げの直後に思わぬ災害に見舞われる。2000年の東海集中豪雨だ。鶴田商会が位置する名古屋市西区あし原は、決壊した新川のすぐそば。倉庫も作業所も160センチも冠水したという。

「何百キロもある機械が水に浮いていたり、泥まみれの機械の中からカエルが飛び出してきたり。大変でしたが、そのときに本当にたくさんの方々に助けていただいたんです。大変なときでも、仲間がいると、楽しんだり笑顔になったりすることができることを改めて実感しました。最後は、“どうせいろんなものを整理することができるんだから、豪雨の前よりキレイにしちゃおう”って(笑)」。

当時は計り知れない苦労もあったに違いない。しかし、そのような状況の中でも、いやそのような状況の中だからこそ、つながることの大切さを心の底から感じたという。

ライフスタイルや価値観の提案を

「松の力」は発売当初から詰め替え方式を採っている。「ハジーバッグ」というフィルム製の袋容器を採用し、中身がなくなったら送り返して頂き中身を詰めて返送するという方法だ。
当初は「そんな面倒なことをするお客様がいるのだろうか?」と訝る声も多かったというが、鶴田さんはこの点にはこだわった。

「もちろん、容器をリユースすることで無駄をなくしたいという想いもあったのですが、この方法はお客様とのコミュニケーションの手段でもあると思ったんです。私たちは、新しい店舗をつくることはできなかったので、最初からインターネットの販売が中心でした。普通の通信販売だとお客様の顔がみえなくなるでしょう。そうではなくて、手渡しの感覚を大切にしたかった」。

実際、「松の力」の一番のPR方法は、お客様からの口コミだそうだ。

その後、取り扱う商品も徐々に充実し、またエコ・ブランチの商品を扱う販売店も増えてきた。「松の力」は量り売りも可能で、売る側と買う側が「松の力」を通じて出会いつながっていく循環も生まれているし、販売店同士がもっとお客様に喜んでもらうためにはどうしたらいいんだろうという想いを共有する勉強会なども開かれている。

 エコ・ブランチの立上げから8年。売上が落ちたことはなく、徐々に増え続けている。「小さな事業所だから」と鶴田さんは謙遜するが、つながりがつながりを生み出す豊かな循環がエコ・ブランチの周りに生まれている証だろう。

「ほ・の・ま」の活動を進める中で、環境問題は、実は現代社会に生きる人間の心の問題ではないかと考えるようになった鶴田さん。

「もともと日本に文化として伝承されてきた“もったいない”や“おかげさま”という心は、自然への畏怖や生かされていることへの感謝の気持ちがあってのことだと思うんです」。

「日本は高度経済成長・バブル経済・グローバリズムを通して、人がどんどん自然やまわりの人から切り離されて、部品のように扱われるようになってしまった。自分が部品としてしか扱われていないのに、周りに目を向けることなんてできませんよね。だから、わたしたちは環境商品を売っているというよりは生き方や価値観を伝えたいと思っているんです。競争しなくては生きていけないと思い込んでしまっている人に、“降りてもいいんだよ”“大もうけはできなくても、新しい価値で生きようとする者同士がつながれば、分かち合いながら新しい社会をつくっていくことができるんだよ”って」。

すべてのいのちが活かされる社会へ

鶴田さんにはじめてお目にかかったのは、もう5年以上も前になるだろうか。自らの想いを熱く語り、様々な企画を実現し、人と人の出会いを紡いでいく姿は、とてもエネルギッシュで、「スゴイ人だ!」というのが第一印象だった。
 取材の折も、その想いを一層強くしたのだが、ふと聞いてみた。「鶴田さんはどんな子どもだったんですか?」その答えは意外なものだった。
 幼い頃からとても病弱で、小学校は2年間しか通うことができなかったという。

「子どもの頃は本ばかり読んでいました。体が弱かったこともあって、命とか宇宙とか魂とか、そういうことを知りたいという気持ちはとても強かったし、何かマイナスの言葉を聞くと本当にそうなったらどうしようって思ってしまうようなところがありました」。

成長するにつれ、健康を取り戻していったが、その過程で、体と心はばらばらではなく、つながっているんだということを強く感じる体験があったという。
命のしくみや宇宙の摂理を知りたい、そしてそれに沿って生きていきたい、争わずみんなと仲良くしたい、そして誰もが自分らしく生きていくことのできる世の中になってほしい。そう願う繊細で柔らかな心を持った少女は、今その全てが重なり合った場所を自らの手で創りながら生きている。
 いのちが生かされ、人とつながることのできる場所は、どこか遠くにあるのではない。そう、それは全ての人の心の中に、今この瞬間にも存在している。
 鶴田さんの話を聞いていると、幼い頃、砂浜で拾った貝殻をそっと耳に当てて、その奥から聞こえてくる音に耳を澄ました感覚を思い出す。
 自分の魂の声に耳を澄ますこと―。それを伝える鶴田さんの存在は、命の源である海のように深い優しさに満ちている。

取材・文/久野美奈子 写真/河内裕子(写真工房ゆう)

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