卒業生、起業の学校を語る 〜わたしたちが起業の学校で出会ったもの〜
会報aile84号(2012年3月号)

【対談】 卒業生、起業の学校を語る
〜わたしたちが起業の学校で出会ったもの〜

今年で開校8年目を迎える「起業の学校」。
すでに100名以上が起業の学校を巣立ち、様々な形で地域に根差した身の丈の事業を立ち上げています。

 ところで、「起業の学校」って一体どんなところ?何が学べるの??
今回、起業の学校の卒業生のみなさんにお集まりいただき、起業の学校について語っていただきました!

矢井清和さん

有限会社エコクラフト代表取締役
起業の学校4期卒業

1998年、33歳で天然手工芸品素材を輸入・加工・販売する有限会社エコクラフトを設立。必死で駆け抜けた10年を経て、次の10年を考えるため、「もう一度理念を見直したい」と起業の学校へ入学。

渡辺ゆりかさん

草の根ささえあいプロジェクト 代表
起業の学校3期卒業

学生へのキャリア支援・生活保護受給者や障がい者への就労支援等を経て、2011年に仲間たちと立ち上げた「草の根ささえあいプロジェクト」代表に。すべての人に居場所と役立ちの機会がある社会づくりにむけて、東奔西走中。

毛利有香さん

ハッピーフードカンパニー設立準備
起業の学校7期卒業

イタリア料理店調理師、料理教室・パン教室の主宰等を経て、働く女性向けの配食サービスでの起業を決意。地元で育ったオーガニックな野菜をメインにした「元気を届ける食事」事業の実現に向けて、商品開発・マーケティングを進めている。


 

ゆるがぬ理念を手に入れたくて

−まずは自己紹介をお願いします!

【矢井】起業の学校4期生の矢井です。岐阜県関市で、貝殻や木の枝などの天然自然素材を手工芸品として途上国から輸入し、加工・販売している有限会社エコクラフトを経営しています。

【渡辺】起業の学校3期生の渡辺です。“草の根ささえあいプロジェクト”の代表をしています。“草の根ささえあいプロジェクト”は、貧困・障がい・孤独など、生きにくさを抱えている人たちをサポートするネットワークです。現在、3月からの本格稼働に向けての準備を進めています。

【毛利】起業の学校7期生の毛利です。つい先日卒業したばかりです。地産地消のオーガニックフードを、働く女性たちにお届けする配食サービス事業での起業に向けて、準備を進めています。少しずつテスト販売を始めながら、2012年中には、本格的に事業をスタートさせたいと考えています。

−起業の学校に入学したきっかけを教えてください。

【毛利】もともとオーガニックカフェとフェアトレードショップを併設したお店を持てないかな、と漠然と考えていて、いろんな起業セミナーにも出ていました。でも、どうもしっくりこない。何から手をつけたらいいのか分からない状態が続いていました。そんな中で、ウィルあいちの女性のための起業相談で関戸校長と出会い、起業の学校のことを知ったのです。

【矢井】僕が入学をしたのは、起業してから10年目でした。みんなに「なんで今更入るの?」と聞かれたけれど、33歳で起業した時は、ただただ必死で、正直、理念なんて考える時間も心の余裕もありませんでした。ただ、10年を自分なりにやってきて、今までと同じやり方ではだめだと気づきました。次の10年を考えたとき、理念や経営方針をしっかり考えたいなと思ったんです。

【渡辺】私は、あるイベントで起業支援ネットのブースを訪ねたことがきっかけで、起業の学校を知ったのですが、他の方と違って、「これがやりたい!」というはっきりしたものがなかったんです。でも、これから生きていくときの“自分の軸”を持ちたいとずっと思っていました。起業の学校のオープンキャンパス(注1)に参加した時に、卒業生の方が「一生ものの理念ができた」とおっしゃっていたことに刺激を受けて、入学を決めました。

 

多様な人と出会う場所

−実際に入学してみていかがでしたか?

【矢井】正直、思った以上に大変でした。実はちょっとなめてたんですよね。俺、経営者だしって(笑)。でも、起業の学校は、“全ては自分の中にある”という方針が貫かれていて、しっかり自分自身と向き合いながらでないと進んでいけないカリキュラム。「こうすれば上手くいく」という教え方ではなくて、本当にやりたいこと、社会に必要なことをどうしたら実現できるかを一人ひとりが考えないといけなかった。

【渡辺】わたしは、一番最初のワークの「理念形成」で本当に苦労しました。なかなかこれだ!というのが出てこなくて、結果12回もワークをやり直しました。授業もワークもどんどん進んでいくし、焦りはありましたね。でも、自分の軸がほしくて入学したのだから、理念にはこだわろうと決めていたので、やりぬくことができました。理念ができた瞬間のことは、今でも映像として思い出せるくらいに印象に残っています。

【毛利】入学してみて、共に学ぶ仲間と出会ったときは、「いろんな人がいるなぁ」と。ものすごく多様なんですよ、やりたい事業の内容も、キャラクターも(笑)。でも、自分だけのために起業したいという人は一人もいなくて、人の役に立ちたいという点では共通なんですね。だから、お互いに影響を与えあって、モチベーションを高めていくことができたと思います。

【矢井】それはあるよね。僕はすでに経営者だったんですが、経営者になると、なかなか厳しいことを言ってもらえないし、物事の見方も狭くなっていくところがあると思うんです。10代から60代の多様な仲間と出会えたことは、「そういう見方もあるのか!」という気づきになりました。

【毛利】でも、だからこそ、なのかな。卒業した時は、一瞬、放心状態になりましたね。起業の学校に通っている時は、宿題も毎週出るし、締切もあるし、ものすごく大変だったんですが、そういう縛りがなくなった途端、逆に不安になりました。でも、これからもつながっていける仲間もできたし、たくさんの指南役(注2)とも出会うことができた。ようやく自分自身の足で踏み出せることができる準備ができたんだと気持ちを切り替えて、今は起業準備に邁進しています。

 

たくさんのつながりが背中を押してくれる

−起業の学校の卒業生は、口をそろえて宿題が大変だったと言います。みなさんにとってはいかがでしたか?

【渡辺】平日の日中は仕事もしていましたし、家に帰れば家族もいるので、時間を確保するのは大変でしたね。常に鞄の中にワークシートが入っていて、移動中など、時間があれば、常に宿題のことを考えている状態でした。

【毛利】わたしは、最後には家族も巻き込んで宿題に取り組んでましたね。起業をするには、家族の理解も必要だと思っていたので、宿題を夫や娘に見てもらって、意見を聞いたりもしました。

【矢井】自分の場合は、仕事が終わった1時間を起業の学校の宿題の時間にあてると決めていました。なるべく、宿題に取り組むのは早めにして、見直しの時間もとるように心掛けていました。そうすると、ふとアイデアが湧いてくることもある。結局、自分の事業を真剣に考えて、組立てていけるのは自分しかいない。起業の学校は、そのための場と手段を提供してくれるところだと思います。

【渡辺】その上で、いろんな人とつながれる場所でもありますね。今、わたしは卒業から4年を経て、ようやく起業というところまできたのかな、という感じなんですが、その時間の中で同期の仲間、先輩、後輩、先生方からいろんんな力や支えをいただいてきました。その「もらったもの」の大きさを思うと、歩みを止めるわけにはいかない、と思うんです。恩は直接返せないけれど、自分たちの事業の中で、わたしたちがサポートする相手に何かを渡していくことが恩返しになるのかなって。

【毛利】起業の学校に通ううちに、どんな人との出会いでも楽しめるようになってきた感覚があります。個性豊かなメンバーなので、最初は戸惑いもありましたが、相手に真剣に向き合って、普段なら流してしまうようなことも一緒に考えていきながら、共に成長していけたんじゃないかな。

【矢井】一方で、起業の学校という場は居心地のいい場所かもしれないけど、社会の中ではそうではないことも多いっていうことは意識しておいた方がいいよね。起業の学校で、エネルギーを蓄えて、そこから一歩踏み出したら、自分自身で場数を踏んで、痛い目にもあいながら成長していくしかない。だから人生、面白いんだし。

−では、最後にこれから起業の学校に入学をご検討されているみなさんにメッセージを。

【矢井】興味を持ったら、まずは動いてみてください。オープンキャンパスや無料公開講座(注3)を体験してみて、自分に縁がありそうだと思った方には、きっと大きな学びがあると思います。

【渡辺】起業の学校に入ると、自分自身と向き合う辛さをとことん味わいます(笑)。でも、私にとっては、自分の進む道がわからない・見えないことの方がもっと辛かった。お互い、頑張りましょう!

【毛利】起業の学校で考え抜いた事業プランは、自分そのものだと思っています。それがあることで、人との出会いやつながりも加速している気がします。新しい仲間に出会えるのがとても楽しみです!

 

*注1)オープンキャンパス:毎年3月に開催される起業の学校の入学説明会
*注2)指南役:起業の学校の卒業式では、先輩経営者・各種専門家など、この地域で活躍する方々から直接アドバイスを受ける。そのアドバイザーを起業の学校では指南役と呼んでいる。
*注3)無料公開講座:毎年4月に開催される、起業の学校の内容が体験できる無料講座

■起業の学校についての詳細
http://www.npo-kigyo.net/kigyo-school/
お問合せ・お申込みは起業支援ネット事務局まで

取材・文/久野美奈子 写真/河内裕子(写真工房ゆう)

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